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IWGPシリーズも10冊目の本作で第一シーズンは終わりとなっている。相変わらずマコトは店先であくびをし、タカシはキングとして君臨している。私がこのシリーズを愛してやまない理由は解説で少々触れられているのだが、ミステリ小説、青春小説というジャンルでありながら、犯罪小説でありハードボイルドというジャンルに位置するからだ。
マコトは一人でクリーンに解決するトラブルシューターではないし、キングやGボーイズの手を借りて危険な橋も渡る。それが最善だとわかっていても、潔癖な人間は暴力を好まないし、探偵役がひとり頭脳労働をした結果の解決でなければ受け入れないだろう。が、このシリーズにはかつてそんな潔癖な人間だった私もをハメてしまう魅力があるのだ。
残念ながら石田の描く「若者」は今からみるとステレオタイプで若干古臭い。が、突出した人間を描くのは恋愛小説では必要だが、青春小説やハードボイルドに必要だろうか? むしろ凡人だからこその悩みを描くことができる作者としての楽しみ、自分を当てはめることのできる読者としての喜びがあるのではないだろうか。
今回も一冊に4つの季節を折り込み、綺麗に余韻を残しつつ終わった作品だった。

『データBOXの蜘蛛』
うっかり開いてしまった知らないアドレスからのメールには、キングから紹介され一度トラブルの解決のため会いたいという内容が書かれていた。冬の電気屋同士のバトルを見物して少し疲れたマコトは、とりあえずそのメールに返信して話を聞くことに決める。現れた男の話す内容は、社内機密のデータを入れた携帯を拾ったという人間から脅されているというものだった。

シリーズも10冊となると、Gボーイズの悪い噂も日常のようになっているようだ。明らかに暴力を期待している人間の期待に応えてやる必要などないだろう。内容としては簡単な脅迫犯を取り押さえて二度とやる気を起こさせない、というものなのに、スマートにスムーズな仕事だと思ったらだんだん雲行きが怪しくなってしまう。タカシの「お前のいう楽な仕事はいつも最後でもつれるな」というセリフには同意しかない。

『鬼子母神ランダウン』
タカシに誘われて新品の自転車でサイクリングをすることになったマコトは、鬼子母神の前で女性に声をかけられる。なんのことかさっぱりわからなかったが、タカシがやけに乗り気でその女性の話を聞くことになる。なんでも女性の弟はこの鬼子母神の前で、白い自転車に轢き逃げされて、左足の足首を骨折。大好きなサッカーができなくなったのだという。女性はそのひき逃げ犯を探していた。

いやータカシもこんな顔をすることがあるのか、と、漫画やアニメではなく小説なのにまざまざと脳裏に浮かび上がってしまった。これはマコトでなくても恩を売りたくなるだろう。いたってシンプルな筋で、ひき逃げ犯を探している女性に協力して犯人を張り込みして探すだけなのだが、人間模様が入るとこうも面白くなるか。

『北口アイドル・アンダーグラウンド』
店番をしているマコトの元に、地味な格好の女性が訪ねてくる。声だけはびっくりするぐらい心地よい聞き心地なのに、外見とそぐわない。なんでもその女性は地下アイドルをしていて、最近ストーカーでタチの悪いのがいるらしい。マコトはボディーガードとして女性に付き添うことになる。

2010年の5月に雑誌に掲載されていたこの作品は、おそらく当時としては最先端だったにちがいない。ようやくAKBなどが出て来て「劇場型アイドル」というものが認知されて来た頃。それをネタに一本書けてしまうのが石田のすごいところだ。ちゃんと取材したんだな、という内容もなかなか好感度が高い。

『PRIDE』
締め切りに追われてネタを必死に探しているマコトの元に、美人が現れる。彼女は3年前に自宅へ帰る途中、4人組の男にレイプされたのだという。彼女の話を聞いて、依頼を受けることにしたマコト。そのまま女性と連れ立って、若者のホームレスを支援する施設HOPに取材に向かう。HOPの代表は金髪の嫌味な弁護士で、メディアの評価を非常に気にしている人間だった。女性に「あの施設はちょっとおかしい」と言われて、調べてみると、なんとその施設では生活保護の詐取をしているという。

あーやっぱりこう繋がるのか、と展開はみえているものの、非常に個人的な理由で読むのが若干つらかった。仇を討ってくれる人間がいる、というのはとても人間にとって大事なことなんだな、とも思った。
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