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夢想にひたされる、物語。
初めて読んだのは高校の時なので感想はおぼろげなのだが、当時は「少年たちの織りなす幻想的な物語」としてしか捉えていなかった気がする。それが、今読むと長野の「徹底した少年の美学」に驚かされる。

紅於と頬白鳥の兄弟は、夏に祖母の家に訪ねてくる。そこには美しい従兄、草一がいる。紅於はこの従兄が気に入らない。頬白鳥は道中にある沼に魅せられる。草一はその沼に近寄りたがらないが、真夜中に紅於は草一が沼のほとりで水笛をふいているのを目撃する。

なんてことない筋の話である。そして、物語であっという場面もなければ大幅に筋が進行するわけでもない。が、十代のサブカル少女たちはこの物語に陶酔したのである。
では、なぜこの物語は愛されたのか? そこが「徹底した少年の美学」が登場するポイントなのだ。
まず、健康的な紅於と病弱な頬白鳥の対象。兄弟愛というファンタジーを内包しつつ、美しい従兄・草一を登場させることで紅於のコンプレックスを刺激させる。頬白鳥に対する二人の対照的とも言える接し方もいい。紅於は優しいのに荒々しく口を尖らせ、草一は本当は嫌なのに曖昧な笑みで肯定する。収束される頬白鳥の反応といえば、とにかく無邪気でてらいがない。
ここに「進行しない物語」と「現実に存在しない少年」、「古い家屋の作り込まれた細部」などが相成って、独特の読み味を完成させている。
ひたひたと迫ってくる沼の気配を察知できそうな夜に読みたい。
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