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石田衣良が川端康成に触発されて書いたというSS集。原稿用紙10枚という短さながら、小説の面白さを味わえるものがいくつかあった。

『ナンバーズ』
主人公は集中治療室の前にいた。ホワイトボードには数字がふってある。その数字は集中治療室内にいる患者の年齢だった。

誰かの死というものは感覚を麻痺させることが多く、それを解放させる手段というのは人によって様々。

『旅する本』
人が望む姿になって持ち主を変える一冊の本。それは多くの人を幸せにしていく。

誰かの手から手にこのように物語が伝わって行くというのはきっと嬉しいことなのだろう。

『完璧な砂時計』
アナウンサーの女は体感でピッタリと秒数を当てることができた。それは男の前でも同じ。

作者本人はこれをホラーというけれど、私はあまり怖くなく、むしろそういうこともあってもいいと思った。

『無職の空』
会社を辞めた陽司。なぜ今まで辞めなかったのだろうと不思議になるぐらいそれは開放感に溢れたものだった。

石田本人の体験が入っている作品。仕事を辞めた後の「将来どうしよう」というプレッシャーより「辞めてよかった」という開放感はなんなんだろうね?

『銀紙の星』
主人公は引きこもり。大学を途中から行かなくなり、延々と本とCDを並べて過ごす。そしてある日窓を開ける決心をする。

引きこもりっぽくなっていたことはあるけれど、ここまで重症ではなかった。過眠と不眠を繰り返すのは誰も一緒なのだなあ。

『ひとりぼっちの世界』
誰と付き合う時も自分の距離を保っている主人公が彼女に告げられる「別れましょう」という宣告。

誰かと壁を作って付き合うということはメリットだけではなく、このようなデメリットもある。

『ウエイトレスの天才』
作家が一年ぶりに訪れたビストロのウエイトレスは、一年前に注文したものをしっかりと覚えていた。

世の中には素晴らしい才能を持っている人間が埋もれているものだ。この才能はすごく役に立ちそうだなあ。

『0.03mm』
コンビニでバイトしている主人公は、その商品を買っていった女になぜか惹かれた。

身をもち崩すかもしれないというギリギリのスリルが読んでいてワクワクする。

『書棚と旅する男』
40代で遊んで暮らせる大金を手に入れた男は、豪華客船に乗って今後の人生を考えようと思った。そこで乗り合わせた老人は「自分のために書かれた本」の選別作業をしていた。

タイトルは乱歩からなんだろうなあ。この中に入っている話の中でも個人的にはダントツに面白かった。

『タクシー』
タクシーの中で交わされる会話は、どこか秘密めいていて懐かしい。

石田の記憶を頼りに書かれた、ある意味ノンフィクション。

『終わりのない散歩』
住宅地を散歩している老女は、ある日主人公に「一緒に歩かないか」と声をかけてきた。

『美丘』の中でもこの症状の老人が出てきたが、とても物悲しい気持ちになる。

『片脚』
恋人の家に届けられた片脚だけの彼女。ふたりは週末の部屋でデートをする。

脚だけをこんな執拗に愛することができるというのはもはや才能ではないだろうか。

『左手』
今度は片脚を送った彼女の家に彼の左手が送られてくる。

出てくる料理が美味しそうなんだよなあ…日常として過ごしてるけれどちょっと怖い。

『レイン、レイン、レイン』
主人公は雨が好きだ。それは小学生の時の記憶にさかのぼる。

私は雨は頭が痛くなるので最近はあまり好きではないが、昔は結構はしゃいだな、なんて思ってしまった。

『ジェラシー』
夫婦の元に子供が生まれた。妊娠期間もその前も完璧だった夫が、子育て期間中に変わってしまって……。

もう完全なるホラー。わけのわからない嫉妬というのは恐ろしいものだ。でもこの場合理由はわかってるのにより一層恐ろしい。

『オリンピックの人』
主人公には4年に一度悩みが訪れる。そして、4年に一度ばったりと再開する男がいる。

そういうサイクルの人生というのもはたからみていて面白いが、嘘を吐き続けて生きて行くというのはちょっと怖い。

『LOST IN 渋谷』
主人公はとくに予定もなく渋谷をぶらぶらする。人と待ち合わせているふりをしたり、食事をひとりでとったり。

この主人公のひとりでふらついている理由が最後の最後に分かるところが良い。

『地の精』
主人公が土地を買うか迷い、もう一度その場所へ足を踏み入れると、小さな男の子が現れた。

なんとなく、こういうものを見るのは幼い子というイメージだが、大人の前に堂々と現れるというのはまったく肝の太い精だ。

『イン・ザ・カラオケボックス』
主人公が取材をした場所はカラオケボックス。目の前には全身ピンクの青い目をした女の子がいた。

こういう風に生きることを認めてくれる親って素晴らしいなー、などと感慨にふけった。

『I氏の生活と意見』
仮にI氏とする小説家の男性の忌憚ない意見。

いやこれ伏せる必要もなく本人だもんなー、と思って、さらに「ラッキーだっただけじゃないかなあ」と疑問。

『コンプレックス』
人には絶対に触れて欲しくない部分というものがあるもので。

コンプレックス自体はごろごろしたその辺にあるものだけれど、それがトラウマと根付いてしまったら大変だよなあ。などと。

『短篇小説のレシピ』
石田がどのように小説を作り始めるかのあれこれ。

これはページ数稼ぎだな…と。対して新しい発見もなかった。

『最期と、最期のひとつまえの嘘』
『短篇小説のレシピ』で思いついた小説を書いたもの。

うーん、感動作なのかもしれないけれど、不倫の段階で私にとっては「ナシ」になってしまった。

『さよなら さよなら さよなら』
今までの人生でいつのまにか消えてしまったものへのさよなら。

これがラストなのはなんとなく納得がいく。私もいつのまにか無くしてしまったものがあるなあ。
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