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小川洋子は喪失を描く達人だ。その喪ってしまったものの輪郭を上手に浮かび上がらせ、暖かい光で照らし出し、ぽっかりとした空白を見せてくれる。

主人公の”私”は、犬のべべと共にアーケードの配達人をしている。このアーケードには様々な、見過ごされてしまいそうな店たちがひっそりと佇んでいる。中古のレース屋、勲章屋、ドアノブ屋、義眼屋……。どこも大繁盛とは言えないが、あるべきものがそれを手にするべき人の元に届くまで、辛抱強く待っている。
”私”の父はこのアーケードの大家だったが、火事で亡くなっている。アーケード全体が家族のような暖かさに包まれていながら、”私”はそれにぴったりと寄り添うことはせず、どこか空虚を抱えている。

「遺髪レース」という章があり、内容は「遺髪で編んだレースを網屋さんに受け渡しをする」というものなのだが、そういえば人類は髪というものに異常に思い入れを残す生き物だな、と思い当たった。残念ながら遺髪で編んだレースは発見できなかったが、遺髪を閉じ込めたブローチなどは昔からあったようだし、最近ではUVレジンに閉じ込めるという方法もあるようだ。
主人公は誰かを悼むためではなく、喪失した自分を悼む為にレースを発注する。それはおそらく世界の中でとても正しいことであり、もっとも身近に失くしたものを感じることのできる方法なのだろう。
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