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『よろづ春夏冬中』という作品の中の『雨師』に登場する人物から膨らませた作品群。
”あめふらし”の橘河と、そこのアルバイト市村、そしてその兄は『よろづ〜』ですでに登場している。新しく登場するのは仲村という美青年だ。

『空蝉』
体から体へ意識を乗り換える”妖怪”の仲村が、新しく乗り換えてしまった(それは不意に起こる)体で今後の宿泊先を探す。それが橘河の下宿だった。「息子になってほしい」と、様々な要求をされることになるが、仲村はそれを嫌だと思わない。
橘河の弱さがこの冒頭の章から見えるので、読者もするっと物語に入って行きやすい。

『蛻のから』
”ウヅマキ商會”という怪しげな橘河の営む何でも屋に、アルバイトできた青年市川岬。初仕事で「蛇を捕まえにいく」と言われ、なぜだか風呂を勧められ……。
市川が真っ当な青年すぎて、自分の巻き込まれた事態になにも気づいていないところにおかしさがある。

『こうもり』
市川は仕事で少年に傘を届けにいく。ウヅマキ商會を出た時は現代だったはずなのに、そこはいつのまにか昭和32年だったーー。
ウヅマキ商會の仕事の一端が見える話。つまり怪異関係の依頼も受ける、ということなのだろう。

『やどかり』
仲村が主役の話。とある奥方から「鍵を池から拾ってほしい」と言われ、その依頼を受けるとその先で過去に出会った女に声をかけられる。その女は昔酒瓶を欲しがっていた。
非常に美しい描写の続く風呂場のシーンにうっとりとしてしまう。

『うろこ』
もらった嫁のさゆりがやたらと弁当にピータンを入れることに最近悩んでいる市川は、とある隠れ宿への運転手の依頼を受ける。その旅に橘河の奥方と息子の鳩彦も同行することになりーー。
女は強い! というのが長野作品には多いけれど、これは見事。橘河夫人の鮮やかさといったら。

『わたつみ』
車椅子の老婆が、夫がほしいと依頼に来る。旦那役に仕立てられたのは社員の仲村だ。ちょうどレポートの代筆を受けていた市川は、その届け先が車椅子の老婆の家だということを知り、そこで雨宿りをしていたら現代に帰れなくなる。
なんでもない思い込みの様に見えるが、次の話を読めばそれが思い込みではなく真実ということに気づく。この構成がうまい。

『かげろう』
市川の兄、峠がウヅマキ商會に訪ねて来る。依頼内容は「蛇を捕まえてほしい」。橘河は奇妙なことに気づく。峠のタマシイのありかが見つからないのだ。果たして彼はなんのためにやってきたのか。
ええ〜そういう展開するの!? となってしまったラストに驚愕。あと一話残ってるのにいいのか? いいんです。

『雨宿』
とある青年が”質屋坂”と呼ばれる坂にあるT家の軒先で雨宿りをする。そこは苦い思い出の場所でーー。
なるほど、こう持ってきたか。最初に書かれている『空蝉』が予期せぬ再会の話だが、こちらもラストにふさわしく同じテーマだ。見事にまとまっていて好感がもてる。
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