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今回の異形コレクションは「遊園地」がテーマだ。様々な幻想と夢を見せてくれる舞台装置である桃源郷を、どういう風に描くのかが気になっていた。


『香港の観覧車』林巧
香港のとある駅で途中下車した主人公は、観覧車へ乗せられる。それには知らない、だけど懐かしい男が同乗して、この観覧車の所以を話してくれる。そう、世界の観覧車、あなたが乗ったことのある観覧車は言ってしまえばたった”ひとつ”しかないのだ、とーー。
これを最初に持ってくるのがすごいな。ラストに持ってきてもいいような話なんだけれど、ラストは井上が書いてるからここしかないのかなー。

『よい子のくに』朱川湊人
主人公はいつのまにか遊園地に立っている。連れがいるようだが見覚えがない。だが、その連れと思わしき人々は自分をあだ名で呼び、いかにも親しげだ。全く記憶が蘇らないことを不思議に思いながらも、彼らと遊具で遊んでいると、突然記憶が戻りーー。
うーん、朱川は基本的に合わない体質なのだが(どんな体質だ)、今回もやっぱり合わなかった…無念。

『番人』飛鳥部勝則
息子と遊園地に来た父親。遊園地では成人式が同時に行われており、なんとも賑やかだ。回転木馬に乗りたいという息子のリクエストを聞いて乗り込むと、視界に西洋の甲冑が現れる。そして蹄の音が響きーー。メリーゴーランドの管理人に話を聞くと、「幽霊なんかは出ない」と突っぱねられる。それでも調べてやはり納得が行かず、管理人の話を聞くために夜に待ち伏せて、なんとか捕まえる。管理人の老人は、「話しても信じてもらえない」と言いながらも、自身の体験した恐ろしい話をし始める。
ラスト一行でゾクゾクっと恐怖という名の快感が走る展開に膝を打ってしまう。うーん、すごい。

『未来の廃墟』小中千昭
廃墟写真家と雑誌の編集が向かった遊園地の廃墟。写真をいまいち良く撮れないでいると、編集者は「こっちがいいんじゃないですか」と道案内をする。廃墟には慣れていないといっていたのに、これはどういうことだ? そう、編集者はこの遊園地に来たことがあるのだ。そして彼は自分の過去を話し始める。
小中は毎度ホラーというとワンパターンで読むのが苦痛だったのだが、この話は幻想的な雰囲気が素晴らしくて手放しで褒めてもいいぐらい完成度が高い。

『遊のビックリハウス』江坂遊
3つのショートショートを組み合わせたまさしくビックリハウスのような小説。個人的には「怪の部屋」の話がすごく好みでよかった。以下あらすじ。
信じられないほどのスリルと興奮を味合わせてくれる遊園地にハマった男がひとり。噂の特別会員になりたくて連日のように通い、アトラクションに何度もチャレンジし、それでも資格はもらえない。死に際それを医者に「これだけが心残りだ」と話すと、医者もその遊園地のことを絶賛し、さらに会員資格を得る方法を知っているというーー。

『見果てぬ夢』黒岩研
最近できた遊園地の人気アトラクションに、主人公は妻子とともに乗り込む。VRのような装置で、モンスターたちを次々に倒して時間以内にクリアすれば、フリーパスがもらえるという。息子のゲーム慣れしている頭脳に、妻の協力を得て彼はどんどんステージを進んでいくが……。
これはすごく好きな話だった。現実的にはまずあり得ないことはわかるのだが、(収容場所の関係とかね)今VRが話題の中、2004年にこれを書いているのはすごい。

『死の仮面』倉阪鬼一郎
灰色の仮面をつけた”誰か”が、いつもあなたを見ている。あなたは足を踏み外して、遊園地へと迷い込む。
これ以上のあらすじがかけない。二人称という珍しい形態で書かれている小説なのだが、残念ながら私には合わなかった。灰色の仮面の”誰か”が誰なのか、の謎だけ解ければいいかな、という感じ。

『使者』皆川博子
主人公の勤めている出版社に、「ぜひ自分の作品を読んで欲しい」という手紙が届く。明らかに誇大妄想の気が読み取れたが、主人公は「作品を送ってこい」と返事を出す。なぜなら、彼は以前友人の本を読んで一笑に付したら、その友人が偉大なる作家になった経験があった。一人でも多くの文人を排出したかったのだ。そして公園のボート乗り場で、船頭をしている青年が手紙の差出人だと気づく。青年を毎日見つめる日々が続くーー。
どうも読んでもなにも残らないというか、「これ遊園地っていうの無理があるよなー、頑張って遊具だよなー」という感じなのだが、昔のヨーロッパはボートが遊園地並みにスリルに溢れたところだったんだろうなあ。

『桜子さんがコロンダ』薄井ゆうじ
好きだった桜子さんが、コロンダ。それを受け入れ難かった主人公に、桜子さんから「ここで待っている」と地図が添付されたメールが来る。どこにいつ行けばいいのかわからない主人公は、何度も色々な場所にいってようやく桜子さんのいる場所へたどり着く。そこには亡くなった父親もいて、二人はニコニコと過ごしているのであった。
薄井ゆうじは『天使猫のいる部屋』が多大なインパクトだったので、いつか集めようと思っていた作家なのだが、この『桜子さん〜』もとても暖かい話で、軽い空虚感と付き合って人間は生きていかねばならないのだ、と思い知る。

『みずいろの十二階』速瀬れい
”あの”大文豪(というと個人的には語弊があると思うのだが)が主人公の作品である。彼が誰かはラストの一行で知れるのだが、それに至る舞台設定がゾクゾクするほど詩的だ。
浅草十二階にある「ルナ・パーク」の廃墟に、東京を離れる前に足を踏み入れた主人公。そこで美しい女性に声をかけられる。女性は自分のことを「弟かと思ったから」という。そしてその弟は、とても不思議な死に方をしていたのであった。

『少年と怪魔の駆ける遊園』芦辺拓
箱庭療法をしている心理カウンセラーが、少年の作る見事な箱庭に捕らえられて、少年の好きな小説の敵役である「怪魔博士」として少年少女探偵団に追われ、自身はこの箱庭に呼び込んだ少年を追いかける。
芦辺はなにを書いても昔懐かし探偵小説になるところが癖なのだが、それはそれでいいのではないのかな、という終わらせ方だった。

『在子(ねねこ)』木原浩勝
昔の移動遊園地には必ずあった見世物小屋。そこの一室に大きな水の入った甕があり、上にボールを吊るすと水の中から腕が伸びてくる。息継ぎなどをしている気配はない。不思議に思った主人公はその甕を覗き込んでしまいーー。
短編で読みやすいのだが、結局最後に不思議が残るのですとんと落ちてくる作品ではない。が、時代設定は好きだし、昔の思い出を語るという形式も良い。

『赤い木馬』加門七海
浅草が舞台の話。十二階の近くにある「ルナ・パアク」が舞台である。その名の通り月の公園ということで当時はかなりの人が集まったようだ。道行き拾った女の子をルナ・パアクに津れていくと、そこでリアリティとは懸け離れた幻影のような美しい光景を見せつけられてしまった物書きの運命やいかに。
自然主義から浪漫派へ物書きの世界が変容していく時代の話で、オチはともかく幻想的な描写が素晴らしかった。

『コドモポリス』牧野修
子供しか入れない遊園地。それがコドモポリス。それはギリギリまで追い詰められた人間しか入場が認められない遊園地であり、主人公の息子はそこへ行ってしまった。どんなに捜索をしてもビラをまいても一向に手がかりが手に入らないが、そんな日常に疲れているところにホームレスの男が「この子なら僕がコドモポリスの話をした子だよ」と語る。ギリギリまで追い詰められた人間しか入れないというのならば、自分にも入場資格があるはずだ。男はその入り口を探す。
残念ながら好みの話ではなかったのだが、ビニル茸というネーミングは即座にビジュアルが浮かぶのですごいなーと思った。

『迷楼鏡』立原透耶
なんと舞台は中国だ。初めて読む作家なのでドキドキしながら読んだのだが、語り部である老婆の話し言葉が少し気になる部分があり目がやや滑るものの、内容は素晴らしかった。
陳の皇女である主人公は、国を潰されその潰した国の皇帝に側室として迎え入れられる。寵愛を受けていることを思い知った彼女は、長い時間をかけて復讐をすることを決心する。それは寵愛されているという立場を利用し、運河を作り、楼閣を作り、気脈を乱し、皇帝を色狂いにし、国を滅ぼすという計画だった。

『ローズガーデン』佐藤嗣麻子
主人公は夢を自在に操ることができる。明晰夢のようなものである。ヤマネのように眠ることが好きで、その日も眠っているといつもと違う夢をみる。それは自分の夢ではなく、誰か他人の夢であった。そこには海と草原が広がり、遊園地がある。回転木馬の横で泣いている黒い人のようなものは一体誰なのか。
家族の絆を描く作品、といえば大げさかもしれないが、読後感が爽やかでとてもよかった。映像作家なだけあり、脳にダイレクトに映像が浮かんでくる文章だった。

『東山殿御庭』朝松健
遊園地というテーマと室町時代をどう取り合わせてくるか、と思っていたら、こうきたか…。
東山に屋敷と庭園を建てる工事の最中、幾人もの人夫が「あやかしを見た」と訴える。役人は「働きたくないからそんなことをいうのだ」と取り合わなかったが、役人自体が目撃者となってしまい、この騒動を収めなければならなくなってしまう。そこで、役人の上司は数々の寺に相談に行くと、「臨済宗のある僧侶を訪ねてくれ」とやんわり断られる。その僧侶とはトンチで名高い一休禅師であった。

『月夜の輪舞』石神茉莉
主人公の少女は、病院で勤務している母親と、母が夜勤の日には朝帰りをする父親を持っている。移動遊園地ができたと聞いていきたいと両親にせがむが、両親は連れて行ってはくれず、11歳なのだからとたった一人で遊園地へといってしまう。そこで闇をそのまま人にしたかのような男の人に手を引かれ、遊園地を案内される。彼は”ハーメルンの笛吹き”なのか?
とてもホラーとは思えないほど優しい結末で、読んでいて安心感がある。また、主人公が11歳という年齢のせいか文章自体も決して難しくなく読みやすかった。

『妖精の環』片理誠
天使のように美しい少年、レイは森の中でフェアリー・サークルを見つけ、妖精の国へ行く。そこは遊園地で、どこにも人の姿も妖精の姿もない。アトラクションに足を踏み入れると、そのアトラクションの妖精があらわれ、一緒に遊ぼうと声をかけてくる。レイは美しいことに誇りを持っていたので、同じく美しい妖精に心を奪われ、妖精の力を手に入れランスロット卿のようになりたいと日々願っていたため、力になってくれる妖精の吟味を始める。
妖精の国が遊園地、というアイデアはよいのだが、夜になったらどうなるかがやや透けて見えている展開でそこが少し惜しい。

『運命島』奥田哲也
人間消失の噂がある遊園地へと調査へ向かった探偵が主人公。高所恐怖症の彼は人間消失の拠点ともなっている観覧車、フリーフォール、ジェットコースターに挑まなければならないが、ジェットコースターだけでふらふらになり休憩を取る。何の気なしに入った売店で、売っている品物が拷問器具を模してあるのでは、という疑念がわいてくる。
アイデアが突飛で非常にワクワクしながら読めた。オチがやや弱いが、本編が十分にスリリングなのでこれはこれでいいのかもしれない。

『菊地秀行のニッケル・オデオン』菊地秀行
ショートショートを集めた作品だが、中でも「アナウンス」という作品が皮肉でとてもよい。きちっとオチが見え、さらに驚愕を残す作品は大変貴重なので嬉しい。

『楽園に還る』井上雅彦
ゴジラを思わせる巨大生物が主役の、一人称小説。歓声や悲鳴が音楽に聞こえる彼には、遊園地は”楽園”であった。死を目前にその楽園へと還るイメージが美しい。
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