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しっかり積ん読していた。存在すらほぼ忘れていたが、「異形コレクションまた集め始めようかなー」と思ってようやく読んだのだった。SFには馴染みが薄いが、ホラーテイストの味付けをしていることによってとても読みやすく、宇宙への思いを馳せることができた。


『火星ミミズ』江坂遊
超・短編という感じなのだが、これが最初に配置されているのがいい。次の作品へのワクワク感を高めていける。

『月に祈るもの』野尻抱介
異星人、宇宙生命体がなんと”化石”で登場する。これはあんまり登場パターンとしてはないんじゃないかな。(もしかしたら進化論にはあるかもしれない)祈りをささげるのは人間だけではない。それは信仰の対象というモチーフを超え、全生物に共通する憧憬である。

『アカシャの花』山下定
タイトルからほぼ想像していた通りの”花”である。ちょっとSFをかじったものならば一発で連想するだろう。めちゃくちゃ面白いってわけではないのだが、モチーフが美しく繊細で、ちょっと引き込まれる感じはある。

『黒洞虫』森下一仁
なんとここで早くも感動させてきた。ブラックホールに発生する虫がこの作品に登場する”宇宙生物”だ。とにかく読んだ方が伝わると思うので読んで欲しいのだが、何もかもなくした人間がなにかを肯定させると死んでも構わないほどに勇気を奮わせることができる、というのは本当に人間の真実だよなあ。

『緑の星』谷甲州
生命体、と言われて植物をメインに持ってくる人はそんなにいないのではないだろうか。そのモチーフ自体が奇妙だったので、ワクワクしながら最後まで読めた。しかししっかり植物が主役のホラーって作れるんだなあ。

『パートナー』森岡浩之
なんと性交が”変態趣味””特殊性癖”と捉えられている未来での、それを好む人々が集まる秘密クラブが舞台の話である。うーん、これがゾクゾクくる絶妙さで、予想通りのラストを迎えるのに、それがどこか一安心した気分になるのだ。愛玩用の生命体はファービーみたいなものを想像したんですけどあってますかね。

『言の実』岡本賢一
SFじゃなくて、アマゾンの奥地が舞台でも話に遜色なさそう。ナメクジみたいな生命体の背中になる実を食べることにより、ほぼ中毒状態になり背中に黒い腫瘍ができる。が、人類はそれを口にすることはもうやめられない。だからその”ナー”と呼ばれる生命体の主、”神ナー”の言葉を伝えられるという巫女に会いに行く。ナーの意思とは一体なんなのか。人類をどうしたいのか。これが単純な話なんだけど面白いんだなあ。

『一匹の奇妙な獣』山田正紀
ごめん…すごく難しかった…ちゃんと読めなかった…。アウシュビッツが舞台だったり戦争描写があったりと非常に硬派な物語なのだが、「長編にする予定の話の一部分」という説明にどうしても納得がいかず、意識がしっかりと読み取ってくれなかった。せっかくの書き下ろしアンソロジーなのだから、別の話でもよかったんじゃないかなあ。

『魅の谷』梶尾真治
しっかしカジシンは短編はうまいのになんで長編になると途端に…おっと失礼。オチがめちゃくちゃ見えている話の割にしっかり読ませられてしまった。”魅の谷”と呼ばれる場所に生息する生物、青とピンクの対の生物が男女に取り付くとその二人はどんなに嫌い合っていても心から愛し合ってしまうーーうーん、やっぱこの話、最初の数ページでオチが読めません? いや面白かったんですけどね。

『夜を駆けるものたち』大場惑
この話のうまいところは、出てくる生物が「宇宙人」「エイリアン」ではなく、あくまで動物というところ。そして、舞台の惑星には昼の部分と夜の部分があり、生物は”夜明け”の部分をひたすら走りながら生きているというところだ。主人公がヤクザってのも面白いが、儲けのためにいやいやツアーを敢行している彼が、とある参加者に心を寄せていく(恋愛ではない)という部分がヒューマニズムって感じで素晴らしい。人間も捨てたもんじゃないな。

『破滅の惑星』石田一
これめっちゃ好き。人間が移住できる星を求めて宇宙船を出向させ、調査してそこに文明があったことを知るーーまあなんてことない舞台設定なのだが、それが絶妙に生きるキャラの背景を持ってきて、オチが簡潔で分かりやすい。落語を聞いたような感覚になる。

『三人』田中啓文
ジロウ、イヴ、マリア。宇宙船に同乗している乗組員3人である。この3人の視点が切り替わり話が進んで行く。精液を集めてホムンクルスを作るために1日6回のオナニーをするジロウ。イヴと付き合っていてマリアのことが嫌い。自殺マニアのイヴ。霊感があると言い張り、手首を何度も切り、実はマリアのことを思っている。ジロウのことを独占していることに優越感を持っている。マリアは性欲がやや強く、何度もジロウをベッドに誘っている。それは乗組員で男がジロウだけだからだが、彼女は過去スターだったことを誇りに思っていてジグソーパズルが趣味。これがドロドロのホラーになるのだから、「宇宙生命体」という異物はすごい。

『宇宙麺』とり・みき
このアンソロ唯一の漫画である。ラーメンに扮した宇宙生命体が地球(もちろんラーメン大好き日本を中心に)を大パニックに陥れ、街中からラーメン屋が消え、人々はカップ麺しか味わえなくなってしまう。が、実は宇宙麺は乾燥麺に化けることもでき…。二重に用意されたオチが思わず忍び笑いをしてしまうほど綺麗にまとまっている。

『話してはいけない』ひかわ玲子
SF関係なくこれはホラーでしょう。狙っている女性と仲の良い、幼馴染だという男性から聞かされる「話しちゃいけないんだけど…」としつこいぐらい前置きをされて語られるにわかには信じがたい話。それが高位生命体によるいたずらなのか、粛清なのか。話してはいけない、と言われると話してしまいたくなるものである人間の心理を上手に描いている。

『古いアパート』竹河聖
王道ホラーという感じの作品。新築のマンションに住んでいるオールド・ミスが主人公で、隣のアパートになぜか好意を持っている。そこには誰かが住んでいるという気配もなく、彼女は住人に会ったこともない。が、窓から覗く顔を目撃して、手土産を持って侵入すると…。うーん、アブダクションものは王道なのだけれど、ちょっとホラーよりすぎるかなという感じもする。

『バルンガの日』五代ゆう
特撮には詳しくないが、バルンガといえばウルトラ怪獣とわかる程度には有名だ。そしてそれを堂々タイトルに持ってきているところにも好感が持てる。バルンガの胞子に影響を受けない主人公の、皮肉にねじれた愛情表現が非常に美しく、これはバルンガという怪獣をモチーフにしていなければできない芸当だなと感嘆。

『懐かしい、あの時代』友成純一
なんと昭和を代表する学生の安保運動を宇宙と絡めてきた。面白い。非常に面白い。主人公の設定がいいというより、持って来た時代背景がうまい。

『占い天使』笹山量子
この主人公の「平凡な日常で万事オッケー、突出したことなんて全く歓迎しない」って感じの生き方が最高である。宇宙人が部屋に勝手に居座っているのに平気で録画していたドラマを見ながら弁当を食べ、ビールを飲み、人類の存亡をかけた戦いをじゃんけんで決定してしまうとは! これは読むべき作品だ。

『内部の異者』かんべむさし
この作品、どうも私に合わなかったのではないかと思う。目が滑ってしょうがなかった。読み進めようとしてもはかがいかないのだ。昭和の懐かしいテイストに合わせて異星人との戦闘を描くというアイデアはいいのだが、硬質な文章がかえって読みにくさを倍増させてしまっている。惜しい。

『来訪者』横田順彌
今度は古き良き明治大正昭和時代のカストリな時代背景に、小説家の客として現れた異星人という設定。読みやすく、このシリーズを集めたくなった。

『探検』井上雅彦
このシリーズ唯一の欠点は、監修者である井上の文章が毎度弱いところにあると思う。いかにも他の作者を突出させるための平凡な、無難なつくり。特筆するべき部分が何もなく、ちょっとがっかりする。が、意識を消しゴムにのりうつらせるというアイデアは非常に面白かった。

『安住氏への手紙』菊地秀行
いやー感服しました。舞台が遠野というのもいい。妖怪の聖地、つまり最高にアナクロな場所に宇宙センターができるというのも巧みだなと思うし、女の執念をこれでもかと書いている。手紙の文面が慎ましやかでお淑やかなのがまた恐怖を倍増させる。

『時間虫』堀晃
大変にバカバカしい内容なのだが、きちんとホラーになっているところがうまい。舞台設定も上手で、SFである必要をきちんと感じさせてくれる。時間を逆行させる虫。それとたった一人で戦う男の話なのに、どこかコミカルで面白い。

『キガテア』眉村卓
ラストにこの話を持ってくるという手法が見事だ。キガテアと呼ばれるまるで愛玩用に作られたかのような生物を、駐屯部隊の人間は本部へ送る。そしてその愛らしさに「もっと送れ」と要請がどんどんくる。キガテンという星の調査を進めていた駐屯部隊ではその時、異変が起こり始めていた…。人類の業とぞっとするような締めくくりに思わず拍手。
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