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 野生の植物が消えた遥か未来。「王子」と呼ばれる人間に依って過去から持ち帰られた植物の発芽が行なわれていた。王子は昏睡状態でけして目を覚ますこと無く植物を育て続ける。王子にはピエロと呼ばれる少年がつねに付き添っており、ピエロは王子の世話役として、同調<シンクロ>の相手として、また王子はピエロに食料を与えるものとしてそれぞれ分化し存在していた。そんな未来、とある王子が一人のピエロのきまぐれによって超<リープ>し、行方不明となる。その王子として三人のピエロにつきまとわれることになったスワンは、手のひらから身体から発芽してくる植物によって悩まされていた。そしてスワンは次第に自分の運命という物を知っていく。

少年と絶滅した植物という組み合わせ、遥か未来を舞台にした新感覚のSFである。長野の描く硬質な少年たちは切り先で指から血をにじませそうなほどに美しく、繊細で危なっかしい。そのもろさが原始の植物と相まって独特の感覚を生み出し、不思議な読み味を充分に醸し出している。またいつもの濃厚ともいえる少年愛のイメージはなく、あくまでも友愛の範囲内での少年愛にとどまっているところが好ましい。実はよく考えられている創作語彙の数々や、時代設定などもワクワク感を見事に演出している。長野作品はこれまでも何度も読んできたが、どの作品ともことなる味付けで、特にピエロ-βの役割が物語に深みを出している。スワンの兄であるカイトの設定も最後まで謎につつまれており、その決着のしかたも非常に納得のいくものだった。
長野作品で一、二を争うほど完成された世界がこの本の中には広がっており、その閉じた円環の中には瑞々しさときらめきが溢れている。どこまでいっても世界は交わることはないのであり、他人は他人であり、同化はできない。それを植物という小道具を使うことにより可能にしたロマンある一冊。
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