上記の広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。
新しい記事を書く事で広告が消せます。



この本のタイトルは『ウェスト夫人』でも構わないのではないだろうか。
梨木が20代の頃にイギリスで下宿していた女主人の名前だ。本書はそのウェスト夫人と彼女を取り囲む友人たちとの交友をメインに描かれたエッセイとなっている。
ウェスト夫人の下宿で出会った親愛なる、理知に富み男運がないジョーについて書いた「ジョーのこと」。ナイジェリアから留学のためにやってきたアダたち一家のことを書いた「王様になったアダ」。ウェスト夫人の下宿があるストリートを巻き込んだ一大騒動を書いた「ボヴァリー夫人は誰?」。夫人から紹介された簡素なホテルとトレッキングの時に考えたことを書き連ねた「子ども部屋」。ウェスト夫人の父親から始まる、戦争体験談を集めた「それぞれの戦争」。プリンス・エドワード島へ向かう車内で考えたことを書いた「夜行列車」。強引に”家族だ”という認識のもと参加せざるを得なくなってしまった初めてのニューヨーク、そこで過ごした「クリスマス」。そして自閉症やアスペルガー症候群のことから世界平和のことまで考える「トロントのリス」。夫人からの手紙を抜粋した「最近のウェスト夫人の手紙から」。さらに書き下ろしの、エマニュエルが日本にやってきた際の話を書いた「五年後」。
私は梨木香歩という作家を『エンジェル エンジェル エンジェル』という作品から知った。本を買った順番も覚えている。『エンジェル〜』の次は『西の魔女が死んだ』、『裏庭』、『からくりからくさ』、そして『りかさん』。これが私の持っている梨木香歩の作品の全てだ。静謐な文章を書く人だというイメージはあったが、まさか英国で暮らしていたとはしらなかった。そしてカナダのトロントなどにもシェルターとしてたまに旅行に行くことも、英語が堪能なことも、田舎嗜好なことも、やや思考が左寄りなことも。何も知らなかった。日本の田舎に住む児童文学寄りの話を書くファンタジーが好きなおばさん、程度に思っていた。
それがこのエッセイで全て認識を改めさせられた。こんなに頭の回転が早く、理論を尊重し、意思を認め、通じ合いたいという情熱に満ちた人だとは思わなかった。
そういえば、『西の魔女が〜』『裏庭』などは、イギリスの児童文学の影響がうかがえる気もする。白魔術のような魔法を使うおばあさんのイメージや、裏庭やタンスの中が別世界に繋がっているイメージ、それは間違いなく英文学のものだろう。
ウェスト夫人に対する観察眼も見事なのだが、何より梨木の思考の仕方が私は気に入ってしまった。あくまで傍観者。当事者ではない。観察を大事に、感情を大切に。その距離感が心地よい。
とてもよい読書体験をできた、と満足している。
スポンサーサイト



なんという美しい言葉たちだろう。それは蔦のように絡まりあって文となり、この本になる。

亡くなった祖母の家を下宿にする事になり、主人公の蓉子と三人の娘たちは素敵な共同体を作っていく。
それが神聖なもののようで、とても羨ましかった。

ラストはあまりの急展開にビックリしてしまったが、これはこれで正しい終わり方なのだろう。



「からくりからくさ」を途中まで読んで、ようこが下宿すると言い出したあたりから我慢ができずにこちらに手を付けてしまった。

心を持つ、そして感情を映し出す市松人形の“りかさん”。元々主人公のようこはリカちゃん人形が欲しかったのだが、おばあちゃんの勘違い(先読み?)でりかさんが家にやってくる事になる。
りかさんを通じてようこは、人の大切な感情だとか、想いだとか、そういった様々なものを学んでいく。

同時収録の「ミケルの庭」は「からくりからくさ」の後日談となっている。こちらもキャラクタがたっていてとても読みやすく、そしてなんだかあたたかい気持ちにさせられる作品だ。



ファンタジーなのにどこか大人向けなノスタルジィを感じる小説。


素敵です。
兎に角読んでください。


私もバックヤードにきっと何かを忘れてきている。
取りに戻らなくちゃ。きっと大切な物だから。



昔の人は何でも自分でやっていた。
ジャムを作るのも、タマネギをつるして保存するのも、オーブンの温度を確かめるのも。
何かに気づける人がきっと「魔女」なんだと思う。
良く解らないと評されている「ゲンジさん」の存在って、子供の持つ憤りや理不尽を詰め込んだ様な存在なんだろう。
だから、もう惑わされない。
おばあちゃんはその事を良く知っていた。



すらすらと流れる様な文体。すとん、と心のどこかに突然落ちてくる感じ。
生まれ変わりを信じてみたいと思った。

天使はきっと、どこにでもいる。
上記広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。新しい記事を書くことで広告を消せます。