PIERROTがインディーズでリリースしたミニ・アルバムがこの『CELLULOID 』だ。セルロイドとは歴史上最も古い熱可塑性樹脂、すなわちプラスチックである。おもちゃや食器、メガネのフレームにまで使われていたが、燃えやすいという欠点のため、今では使用されている製品を見る事はあまりないかもしれない。そんなタイトルを冠したこの作品は、PIERROTがメジャーに行った後でもライブで行なわれ続けた、定番の楽曲が詰まっている。 耳鳴りのような喧噪から始まる『セルロイド』。ヘヴィなサウンドに、裏打ちのドラムが奇妙にねじれ合う。Bメロでのリバーブがかかったキリトの声は、確かな決意を滲ませているようだ。そう、ここから先の楽曲は歌詞にもある通り<超人の領域>である。微妙なズレを生じさせ、サラウンドで攻めてくるツイン・ギター。首の付け根あたりがむずむずとし始め、これからの展開に心が躍る。それを見透かしたかのように、軽快なドラムのフィル・インで『Adolf』がスタートする。ライブでも定番中の定番であるこの曲は、かの有名な独裁者からのタイトルだ。不気味な嘲笑が聴こえると同時に、流れるような、それでいて不安を感じさせる歪んだリフが入る。軽快なドラムと、重いベースに混じる軽やかなギター・シンセ。それがより一層焦燥感を煽る。 3曲目の『脳内モルヒネ』では、ベース、ギター、シンセ・ギターのユニゾンで、別の世界へと連れて行かれる。鼓動のようなドラムに乗る歌は、闇から響いてくるかのよう。Bメロから彼の“脳内モルヒネ”は分泌され始め、シンバルがチリチリとそのことを知らせる。サビへと繋がるメロディは、トリップしてゆく感覚そのまま。叫ぶようなギターがそれを裏付け、突然メジャーコードに変わる。このキモチワルさが、PIERROT最大の持ち味だ。 そして疾走感溢れる『Twelve』。ストレートで切ない曲調と、力強く打ち鳴らされるドラム。混じり合うツイン・ギターも、まさに王道ギター・ロック! といった感じだ。Cメロでの柔らかな声も、この曲が醸し出すもどかしさに一役買っている。 和のメロディから壮大に広がる世界を描き出したのは『鬼と桜』。ぽろぽろと琴の音が鳴り、そのまま流麗な曲になるかと思いきや、2回目のメロでは歪んだギターが入り、おや? と思わされる。それが彼らの策略なのだ。サビでは一転して重く、気怠く、同じ曲だと解るのはかろうじて残る和風の旋律だけだ。開放感のある重さ。これはなかなかできることではない。アウトロではまたギターがクリーンな音に戻り、そんな転調があったことなどは露ほど感じさせない美麗さだ。 人々のざわめき、喧噪。また1曲目に戻ったかのような錯覚が起きる『HUMAN GATE』。軽快なビートに乗せて歌う、PIERROTの救済歌だ。<きっと誰もが同じだけの 苦しみ背負いながら それでも笑顔みせている>。そう、あの独裁者も、あの人も、全ての人間がそれぞれの運命、感情を背負っているのだ。それをここで肯定する事によって、この曲はただのポップ・ソングではなくなる。 セルロイド。たった一枚のフィルタをかけただけで、世の中はもうこんなに違って見える。 ![]() |
淡々としたモノローグ。それは別の世界へ飛び込む為の決意。揺らぐことが怖い、でも踏み出さなければならない。狂ったような三拍子のリズムが印象的な『自殺の理由』から始まる『パンドラの匣』は、PIERROTが初めてインディーズで発売したフル・アルバムである。32という驚異的に少ないチャンネル数で、全10曲をトラック・ダウンしたこの本作は、そんなことは微塵も気づかせない、クオリティの高い作品だ。 このアルバムに描かれているのは、まさに絶望の数々だ。 <救いの手は選ばれた者のみに差し伸べられる>と歌う『青い空の下…』。奇妙な歌メロで私たちを撹乱するかのような『利己的な遺伝子』。そしてリフが印象的な『KEY WORD』。神経のどこかにジリジリくるようなメロディに加えて、突如優しくなるサビでは、大きな運命を背負った者の悲壮が溢れる。5曲目の『ドラキュラ』には悲しみが詰まっており、ギターソロ部分で乗る「ジーザスクライスト!」という叫び声は、演奏にかき消されてしまいそうだ。キャッチーなメロディに辛辣な歌詞を載せる『満月に照らされた最後の言葉』は、主人公の悲しい別れを思い浮かべさせる。『Far East~大陸に向かって~」では、民族的なアウトロと歌詞から、血族的な迫害が脳裏に浮かぶ。『メギドの丘』は幻想的なサウンドだが、重い現状を歌詞が表現している。そしてようやく、強烈にポップなサウンドの『SEPIA』にて、開放感溢れるサビで、わずかにでも希望が存在するように思わされる。だが『「天と地」と「0と1」と』で、その僅かな光は絶望という暗雲に覆われてしまうのだ。Bメロでのだんだんと手数が増えていくドラムは、まるで彼の焦燥感、心臓の音である。延々と遠くへ伸びていくような壮大なサウンドでこのアルバムは終了する。 収録されている楽曲達はまさにパンドラの匣から飛び出してきたように、鮮烈に人間の聴覚を犯していく。ここにつめ込まれていたのは絶望である。しかし、主人公は匣の底に何も見いだしていないのだろうか? 否、PIERROTはそこに何かを見たはずだ。そこに残ったのは、“PIERROTというバンドがもつ可能性”という希望ではないだろうか。 ![]() |
このこじつけっぷり、カストリっぷりがたまらない。 一作目が見当たらないのでこちらから読んだのだけれど、奇想天外さで行ったら一番だと思う。 朱雀十五の性悪っぷりはホームズからの流れを汲んだ本格探偵らしいし、事件がどんどんもつれていくのも、奇怪な動きもゾクゾクする。 ![]() |
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